【初心者むけ】株式投資のための財務諸表分析法

「キャッシュフロー計算書って聞いたことはあるけど、詳しくはわからないな。投資するときどこを見ていいかわからないなー」
こんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。

こういった疑問にお答えします。

✅本記事の内容

  • 3つの財務諸表の特徴
  • 貸借対照表でわかる財務状況
  • 損益計算書でわかる収益性
  • キャッシュフロー計算書でわかる投資意欲
  • 財務諸表が投資に不可欠な理由

この記事を書いている僕(@craftprogramer)はWebエンジニアとして内定したものの自分にはプログラミングが向いていないことを確信し、Webマーケターになったものです。

「名前を聞いたことがある企業だから」「高配当だから」「株主優待が魅力的だから」と、その企業のことを十分に知らないのに株を買うほど恐ろしいことはありません。

有名企業でも利益が伸び悩んでいたり、競合他社に比べて効率が悪い経営をしているかもしれません。売上が伸びていても手元に現金がない状態なら、突然資金繰りが悪化して倒産してしまう可能性も。

すべての企業は業績や財務状況を、株主や従業員、取引先などの利害関係者に開示することが法律で義務付けられているのです。

このように経営状況を開示することを「ディスクロージャー」、開示する書類のことを「財務諸表」といいます。

銘柄選びで「財務諸表」を見る理由は、少ないお金でより多くの利益をあげ、経営が安定しているのか確認するためです。企業に余剰資金があればあるほど、多少経営が悪化しても持ちこたえる自力があるということ。

この記事では「財務諸表」を見て、経営状況が安定しているか判断する方法を解説します。ポイントを押さえれば簡単ですよ。ぜひ銘柄選びの参考にしてくださいね。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の基礎知識

すべての上場企業は、金融商品取引法にもとづきディスクロージャー(経営状況の開示)が義務付けられています。

開示する財務諸表はいくつか種類がありますが、株式投資で見るべき重要な財務諸表は次の3つです。

株式投資で重要な3つの財務諸表

  • 貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
  • 損益計算書(そんえきけいさんしょ)
  • キャッシュフロー計算書

どんな形式なのか、何が書いてあるのかよくわからないという方のために、それぞれの決算書を簡単にご紹介します。

貸借対照表(Balance Sheet)は企業の健康診断


貸借対照表は会社の財務状況をあらわし、「企業の健康診断の結果」とも言われることもあります。会社が持っている資産(現金や、土地や建物など)の総額と、その元になっている純資産や負債の内容がわかります。

必ず資産合計=負債+純資産となり、バランスシートとも呼ばれます。

貸借対照表の読み方について詳しくは「貸借対照表の見方」の記事を参考にしてくださいね。

損益計算書(Profit and loss)は企業活動の通知票


損益計算書は一定期間の経営の成績をしめすものです。売上高から販売にかかった費用などを引いていき、本業以外で得た利益やかかった費用を差し引き、最終的な利益を計算します。

売上高から費用、損失、税金が引かれていき、営業外収益や特別利益が加算されて、当期純利益が計算されるのがわかりますね。

損益計算書については「損益計算書の見方」で詳しく解説しているので確認してください。

実際のお金の流れを示すキャッシュフロー計算書


キャッシュフロー計算書は、貸借対照表や損益計算書ではわからない「一定期間の会社のキャッシュ(現金やすぐ現金に交換できる預金など)の流れ」を示すものです。

本業の営業活動、設備投資などの投資活動、銀行への借金返済や借入などの財務活動にわけて記載し、会社にどれくらいキャッシュがあるのかがわかります。

キャッシュフロー計算書については「キャッシュフロー計算書の概要と見方を紹介」を参考にしてみましょう。

では、財務諸表ではどんなことに注目していけばいいのか、個別に確認していきましょう。

財務状況をチェック!貸借対照表で企業の安全性を確認する

まずは貸借対照表から見ていきましょう。

損益計算書のほうがとっつきやすいのですが、損益計算書の数値をもとに分析を行うときには、貸借対照表にある数字も一緒に見ることになるので、先に貸借対照表について説明します。

自己資本比率が高ければ安定企業!でも企業には借金が必要

貸借対照表は、会社が持っている資産の出所や種類がわかる書類です。

貸借対照表の右側に記載される「負債の部」「純資産の部」を見ると、買掛金や銀行からの借金で構成される負債と、返済の必要がない純資産(資本)が、どれくらいの割合なのかがわかります。

総資産に占める自己資本の割合を、自己資本比率と呼びます。

優良企業は自己資本比率40%以上が目安です。

「無借金経営」をPRしている企業もあります。確かに安定しているのは魅力ですが、銀行からの借入をしないために、事業拡大が積極的にできないというデメリットもあります。

すでにトップ企業になっており、高い収益を上げている企業なら、借入をせずに収益だけで設備投資を行って事業を拡大することができるかもしれません。

しかし、これから成長していこうという企業は、借入しなければ事業を大きく成長させることは難しく、ライバルに遅れをとってしまう可能性があります。

借入=借金と言うと悪いイメージがあるかもしれませんが、企業にとって借入は必要なものです。大事なのは、借入を有効に使って収益拡大に結びつけているかということです。

借入=借金と言うと悪いイメージがあるかもしれませんが、企業にとって借入は必要なものです。大事なのは、借入を有効に使って収益拡大に結びつけているかということです。

流動比率は企業の返済能力をチェックできる指標

貸借対照表でチェックしておきたい項目は他にもあります。次は流動比率についてみていきましょう。流動比率とは、流動資産を流動負債で割った額で、資金繰りの健全性を示します。

  • 流動資産:1年以内に現金に変えられる資産
  • 流動負債:1年以内に支払う必要がある負債

流動比率が100%以上なら、1年以内に返すべき借金を返済できる能力があることを示します。

200%が理想といわれていますが、日本の上場企業では、全業種平均で120%ちょっと、製造業平均で170%ぐらいなので、業種によって差があります

流動比率が低くても問題ない業種の代表は、ガス会社や電気会社です。ガス代や電気代の毎月の回収が全ていきなり滞ってしまうことは、ほぼありません。毎月お金が確実に入ってくるため、流動比率が低くても安全だとされています。

手元流動性が低いと、黒字でも資金繰りが悪化して倒産する

より短期間の資金繰り能力をはかる指標として、手元流動性(現預金月商比率、キャッシュポジション)があります。

貸借対照表の「現金+預金+短期有価証券※」を、1ヶ月の売上で割った数字が手元流動性です。

月商1ヶ月分の現金(同等物)が手元にある企業なら、急な支払いが発生したときでも対応できると判断します。

反対に手元流動性が低い企業だと、急な支払いが発生した時に資金繰りが急激に悪化して倒産してしまうこともあります。

参考に、情報サービス業大手の大塚商会の貸借対照表と損益計算書を見てみましょう。赤丸をつけた部分を使って計算すると、平成26年12月31日決算時点での手元流動性は1.9ヶ月となり、手元流動性は十分に確保されていると判断できます。

短期有価証券とは
短期(1年以内)に換金(売買)する目的で保有している株式などのことです。

有利子負債依存度は50%を超えると危険信号

借入に頼りすぎていないかをチェックするのが有利子負債依存度です。短期・長期の借入金、社債などの有利子負債を、総資本で割って求めます。

さきほども説明したように借入=借金は企業にとって必要なものですが、借金が多くなりすぎると、利息支払いの負担が大きくなり、経営を圧迫してします。有利子負債依存度が50%を超えると危険信号です。

ちなみに、利子がつかない無利子負債というものもあり、これには受取手形、買掛金、未払金、未払費用などが該当します。

損益計算書は企業の通知票!収益性と効率性を知る指標が満載

損益計算書は、企業が儲けを得るためにやってきたことと、実際に得た利益をまとめた表で、企業の通知票(通信簿、成績表)とも言われます。

形式としては、最初に本業の売上高があって、原価や費用や税金などを引いたり、副業での収入を足したりしながら、最終的な利益を計算していきます。

損益計算書からは、企業の収益性を知ることができます。

代表はApple!売上高総利益比率が高い企業は高付加価値

損益計算書ではじめにチェックするのは売上高比率です。企業がどれだけ効率的に稼いでいるかを判断できる比率で、主にこの3種類が利用されます。

  • 売上高総利益率=売上総利益/売上高
  • 売上高営業利益率=営業利益/売上高
  • 売上高経常利益率=経常利益/売上高

売上高総利益率は、売上高から原価をひいた数字である売上総利益を、売上高で割った数です。

売上高総利益率が高い企業は、安い原価のものに高い付加価値をつけて販売し、高い利益をあげていることになります。

売上高総売上率が高い企業として知られているのはAppleです。実際の損益計算書で、2014年度の売上高総利益率を計算してみると、38%になります。


売上高営業利益率は、売上総利益から営業費用を引いた営業利益を、売上高で割った数字で、営業活動の効率の良さがわかります。より少ない営業費用、販売費用で多くの売上をあげているほうが効率がいいですよね。

売上高営業利益率は業種によって差があり、ITやサービス業などは高く、卸売業などは低くなります。そのため同業他社との比較に使ってください。

売上高は同業他社より大きいのに売上高営業利益率が低い場合は、人件費や広告宣伝費や店舗の管理費用が高く、効率が悪いといえます。

最後に売上高経常利益率について説明します。

売上高営業利益率までは企業の本業での効率を見てきましたが、経常利益は本業以外の損益も合わせた数字ですから、企業の総合的な経営効率を見ることができます。

しかし、資産の運用利益や利子で儲けていたとしても、肝心の本業の利益率が悪い場合には、投資対象としての魅力は低いといえるでしょう。

総資産回転率でお金を効率的に使っているか確認

総資産回転率は、企業が資産を効率的に使っているかを見る数字です。投資したお金を、どれだけ売上として回収できているかがわかり、回転率が高いほど、効率は良いです。

これは、売上高を総資産で割って求めます。回転率を改善するには、分母である売上を増やすか、総資産の中にある役に立たない資産(在庫など)を減らすことが必要です。

回転率は業種によって大きく異なり、不動産業など固定資産を多く持つ業種では回転率が低くなる傾向にあります。同業他社と比較するときに使ってください。

ROAとROEはどう違う?どちらも収益性をはかる指標

次に、ROAとROEについて説明します。似ているので、混同してしまう人も多いかもしれませんね。

  • ROE(Return On Equity):株主資本利益率、計算式=最終利益/自己資本
  • ROA(Return On Asset):総資本利益率、計算式=最終利益/総資産

どちらも、資本や資産をどれだけ効率的に利益に結びつけられたかがわかる数字です。

ROEは株主のお金をどれだけ効率的に使ったか、ROAは会社の総資産をどれだけ効率的に使ったかを示します。

例えば同じ10億円の最終利益が出ている企業でも、総資産10億円の企業が10億円の利益を出すのと、総資産100億円で10億円の利益を出すのとでは、価値が違いますよね。

では、なぜROEもROAもチェックする必要があるのでしょうか。

実は、負債が多く自己資本が少ない場合には、分母が小さくなるためROEは高くなります。ROEとROAを一緒に確認することで、「ROEは高いけどROAが低い」場合、借入金が多い可能性があることがわかります。

キャッシュフロー計算書で資金繰りや投資意欲をはかる

最後にキャッシュ・フロー計算書を見てみましょう。

キャッシュフロー計算書は、企業のお金の流れを追うためのもので、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローにわけて記載します。

実際のお金の出入りを確認できるので、家計簿のようなものと思ってもいいでしょう。

  • 営業キャッシュフロー:仕入れや販売によるキャッシュの流れ
  • 投資キャッシュフロー:固定資産の売買によるキャッシュの流れ
  • 財務キャッシュフロー:借入や返済、配当金支払いによるキャッシュの流れ

キャッシュフロー計算書の作り方には間接法と直接法があります。間接法は、損益計算書の当期純利益に調整を加える方法で、直接法よりも簡単なので、多くの企業が間接法を採用しています。

売掛金や買掛金を調整して営業キャッシュフローを表示する

間接法でおこなう調整には、このようなものがあります。

企業活動の全てが現金決済なら損益計算書で事足りますが、実際には売掛金や買掛金で掛け決済をすることが多いです。

そのため、損益計算書で売上が上がっていても、実際には企業にはまだお金が入っておらず、手元にお金がなくて資金繰りが苦しくなることがありえます。

反対に、買掛金で決済していると、損益計算書上では売上原価が発生しているのに実際には現金は減っておらず手元に残っている状態です。

「実際の」お金の出入りを知り、企業の手元にいくらお金が残っているのか知るために、キャッシュフロー計算書がとても大切だとわかっていただけたと思います。

キャッシュフロー計算書は組み合わせで分析しよう!

投資キャッシュフローはマイナスが理想です。将来の成長のために工場建設などの投資を行っていればマイナスになるので、設備投資に熱心かどうかがわかります。手元にキャッシュがたくさんあるのに投資に回していない企業は、資金を有効活用していないととられかねません。

投資キャッシュフローがプラスになっているときは、土地や建物などの固定資産を売却して利益を得たことを示します。これは売却した理由が重要です。

営業キャッシュフローのマイナスを埋めるために資産を売っているなら、かなり経営が苦しいと考えられます。

財務キャッシュフローのマイナスは、銀行に借金を返済していることを意味するので、財務キャッシュフローもマイナスが理想です。プラスだと銀行から新たに借入をしたということがわかります。

借入=悪ではないので、財務キャッシュフローのプラスが必ずしも悪いということではありません。

下の例のように、財務キャッシュフローがプラスで、投資キャッシュフローがマイナスの場合、将来に向けての投資のために借入をしたことがわかります。

ただ、営業キャッシュフローがマイナスで、財務キャッシュフローがプラスの場合は、営業でキャッシュを得ることができずに借入に頼っていると考えられます。

下の例だと、固定資産を売却してまでお金を捻出しており、かなり苦しい状態だと推測できます。

投資を回収できているか、経年変化の確認も必須

営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたものをフリーキャッシュフローといいます。企業が自由に使えるお金で、この中から借入金を返済したり、株主に利益還元したりします。

フリーキャッシュフローは大きいほどいいのですが、一時的に工場建設などで投資キャッシュフローが大幅マイナスになることもあります。そのため、1年分のキャッシュフローだけを見て判断するのではなく、経年変化を見ることが大切です。

投資キャッシュフローのマイナスが大幅増した翌年以降、設備投資を有効に活かして利益が増加しているのかをチェックして、投資をきちんと回収できているか確認しましょう。 

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